カバーポップス→青春歌謡→GSと、トレンドの揺り返し現象を続けた60年代歌謡曲にあって、終始、軸のブレない歌い手であり続けた西郷輝彦。さすが一本筋の通った九州男児!(NHK連ドラ「わかば」見てます。はまり役だ!)
とにかく、高 護さんの解説が詳細かつ目からウロコなので、是非手に取っていただきたい。歌謡ポップスの歴史観が変わること間違いなし!です。その要点だけを挙げてみると……
☆ デビュー曲「君だけを」は、日本で最初のティーンーズ・ラブソングである
☆ 「恋人ならば」は、日本で最初のロックンロール歌謡である
☆ 秀樹、ひろみ、五郎の新御三家は、いずれも西郷輝彦の子供である
つまり、70年代に確立される男性アイドルポップスへの多大な影響力を持つキーマンであり、根底にR&Rの影響があるボーカルスタイルを、歌謡曲の系譜において始めて実践した男性歌手である、というところでしょうか。この重要性も顧みられず、「星のフラメンコ」のノスタルジックな青春歌手ぐらいの認識しか持たれていない現状への苛立ちを感じさせる熱い解説なので、必読。
1964年初頭のデビュー曲「君だけを」からして、残る御三家の二人・橋幸夫、舟木一夫の同時期の作品と一線を画すボーカルを味わえる。橋は作曲家・吉田正の門下生、舟木が遠藤実の門下生としてデビューしたドメスティックな歌謡曲保守本流の新人だった。だが、西郷はデビュー前にウエスタンカーニバルにも出演した、ロカビリー〜カバーポップスの流れを根っこに持つ歌手。何より、それぞれの所属レコード会社がビクター(橋)、コロムビア(舟木)という戦前からの大手二社であるのに対し、クラウンが、西郷デビューの半年前にコロムビアから独立したばかりの新会社であったことが象徴的だ。
「涙をありがとう」の曲調はロッカバラードで、ソウルフルなボーカルがしみわたる。亡き兄貴を慕う歌詞世界と台詞が印象的。65年夏「恋人ならば」から66年「西銀座五番外/恋のGT」にかけて、西郷のエレキ歌謡は頂点を極める。いずれもお約束のテケテケはもちろん、スリリングなブラスとエレキの掛け合い、♪ブムババ♪に代表されるノリ重視で意味のない歌詞等、おいしさ満載! 「恋のGT」のSEは、橋幸夫「ゼッケンNo.1スタートだ」とタメを張る。この時期、西郷輝彦を一気にポップ化させた米山正夫の功績は大きいが、シリーズ最高傑作はハマクラ作「星娘」だと思う。迫力あるベースラインとギロが脳髄を刺激するイントロ、意表を衝くメロディー、裏声やシャックリ唱法……と、オリジナリティー溢れる。これはミニマルミュージックなのではないか?
「傷だらけの天使/霧の中の口笛」といった自作曲(我修院建吾、銀川晶子とも彼のペンネーム)が力作であったことも特筆に値する。前者は「悲しき願い」を思わせるアレンジ、後者はニール・セダカ風オールディーズとやはり洋楽志向。67年の「君でいっぱい」で青春歌謡を総決算。トリッキーなメロディーに緻密なアレンジとプロの仕事を堪能出来る。以降、DISC.1後半はGS全盛時に順応した模索期と言えるが、ポップで熱を帯びたボーカルは相変わらず。
DISC.2では70年代に突入し、新たなスタイルを確立、その方法論を後輩へ継承すると役者中心へとシフトしてゆく様子がよく分かる構成となっている。70年発表「真夏のあらし」は、エンタテインメント性の高いポップスシンガーとしての存在感を示す重要曲。久し振りにチャート10位近くまで上昇するスマッシュヒットとなり、71〜72年にかけてデビューする新御三家へ強い影響を及ぼす。元来、川口真作品は大仰さがウリだと思うが、この曲の濃厚さ・コッテリ感は凄まじい。京平作品「自由の鐘」「死んでもいい」は、やはり洗練されたサウンドの名曲。どちらも西郷の低音を活かした曲で、高音部へと移行する際のダイナミックなボーカルを堪能出来る仕掛け。京平作品における彼の歌唱は尾崎紀世彦に似ているような気がする。
クラウン看板歌手としての怒涛のローテーションから解き放たれた70年代。自作曲「気まぐれな日曜日」以降はリラックスした名曲が多い。「ジグザグブルース」は、垣間見せる「スプーキー」にビックリ。そしてやはり「ローリング・ストーンズは来なかった」は、孤高の問題作。
DISC.1
01. 君だけを(作詞:水島哲/作曲・編曲:北原じゅん)
02. 十七才のこの胸に(作詞:水島哲/作曲・編曲:北原じゅん)
03. 涙をありがとう(作詞:関根浩子/作曲:米山正夫/編曲:小杉仁三)
04. 恋人ならば(作詞・作曲:米山正夫/編曲:重松岩雄)
05. 星娘(作詞・作曲:浜口庫之助/編曲:小杉仁三)
06. 西銀座五番街(作詞・作曲:米山正夫/編曲:重松岩雄)
07. 恋のGT(作詞・作曲:米山正夫/編曲:重松岩雄)
08. 僕だけの君(作詞:星野哲郎/作曲:北原じゅん/編曲:五十嵐譲二)
09. 星のフラメンコ(作詞・作曲:浜口庫之助/編曲:小杉仁三)
10. あの星と歩こう(作詞:能勢英男/作曲:米山正夫/編曲:重松岩雄)
11. 傷だらけの天使(作詞:我修院建吾/作曲:銀川晶子/編曲:小杉仁三)
12. 霧の中の口笛(作詞:我修院建吾/作曲:銀川晶子/編曲:小杉仁三)
13. 初恋によろしく(作詞:星野哲郎/作曲:米山正夫/編曲:佐倉正巳)
14. 恋人をさがそう(作詞:原とし子/作曲:米山正夫/編曲:小杉仁三)
15. 世界の国からこんにちは
(作詞:島田陽子/作曲:中村八大/編曲:小杉仁三)
16. 願い星 叶い星(作詞・作曲:浜口庫之助/編曲:小杉仁三)
17. メキシコ娘(作詞・作曲:浜口庫之助/編曲:小杉仁三)
18. 君でいっぱい(作詞:星野哲郎/作曲:米山正夫/編曲:小杉仁三)
19. 友達の恋人(作詞:銀川晶子/作曲:Robert Carlos/編曲:竹村次郎)
20. 虹を買おう(作詞:磯村浩/作曲:米山正夫/編曲:小杉仁三)
21. 星のフィアンセ(作詞:麻生たかし/作曲・編曲:小杉仁三)
22. 月のしずく(作詞:銀川晶子/作曲:五代けん/編曲:田代久勝)
23. ガラスの涙(作詞:水島哲/作曲・編曲:鈴木邦彦)
24. ヤマハヤングジャンボリーのテーマ(作詞・作曲:不明)
DISC.2
01. 真夏のあらし(作詞:阿久悠/作曲・編曲:川口真)
02. 情熱(作詞:阿久悠/作曲・編曲:川口真)
03. 魅惑(作詞:阿久悠/作曲・編曲:川口真)
04. 掠奪(作詞:阿久悠/作曲・編曲:都倉俊一)
05. 自由の鐘(作詞:ちあき哲也/作曲・編曲:筒美京平)
06. 死んでもいい(作詞:ちあき哲也/作曲・編曲:筒美京平)
07. イッツ・ナイト・アンユゥジュアル
(作詞:G・ミルズ/作曲:L・リード/編曲:川口真)
08. ディ・ライ・ラ(作詞:L・リード/作曲:B・メイスン/編曲:川口真)
09. 涙は眠れない(作詞:星野哲郎/作曲:叶弦大/編曲:荒川圭男)
10. 三日月のバロック(作詞:関沢新一/作曲:米山正夫/編曲:小杉仁三)
11. ブランコの唄(作詞:なかにし礼/作曲:中村八大)
12. 哀しみの終るとき
(訳詞:岩谷時子/作曲:M・ポルナレフ/編曲:春見俊介)
13. 愛したいなら今(作詞:阿久悠/作曲・編曲:都倉俊一)
14. 気まぐれな日曜日
(作詞:千坊さかえ/作曲:我修院建吾/編曲:東海林修)
15. 俺たちの明日(作詞:山上路夫/作曲:山下毅雄/編曲:ボブ佐久間)
16. ローリング・ストーンズは来なかった(作詞・作曲・編曲:藤本卓也)
17. なにかが起きる(作詞:岩谷時子/作曲:加瀬邦彦/編曲:東海林修)
18. 旅立ち(作詞:なかにし礼/作曲:中村泰士/編曲:あかのたちお)
19. ねがい(作詞:山上路夫/作曲・編曲:いずみたく)
20. ジグザグブルース
(作詞:ジェームス・三木/作曲:渡辺岳夫/編曲:青木望)
21. 星のボサノバ(作詞:星野哲郎/作曲・編曲:小杉仁三)
22. 試練(作詞:来生えつこ/作曲:来生たかお/編曲:鈴木茂)
23. 告白(作詞:なかにし礼/作曲:西郷輝彦/編曲:青木望)