マチャアキのまともなベストが出たのはこれが初めてなんじゃないかな。10曲も入ってない廉価盤なんて出さずにこういうタイトルを長くカタログに残してほしいところ。とにかく、音質・編集・デザインのセンスに到るまで、“しんぐる・これくしょん”なら買い!っていうのは間違いない!!
1971年5月10日「さらば恋人」発売。ソロシンガー堺正章にとっての代表曲になると同時に、元スパイダースのリードボーカルがソロとして放った初の大ヒット、という事実は、GS時代を完全に過去のものとし、ジャパニーズポップス元年の到来を告げたといえる。「また逢う日まで」「真夏の出来事」などR&Bの香りがする新感覚の歌謡曲がヒット。6月1日には南沙織のデビューによってアイドルポップスが誕生。71年は筒美京平のキャリアにおいても転機となった年だし、また、彼にとっても「さらば恋人」は重要な曲だった。
フォーク調の親しみやすいメロディーながら、ビートのウラに入るタンバリンや女声コーラス、間奏のスリリングなストリングスを聴くと思わず体が熱くなる。やはりこの曲は“まごうかたなき”ポップス。単なるフォークにしないのが京平先生流であり、ソロになったマチャアキに託すものがあるということ。また、歌謡界以外の作家・北山修とコンビを組んだという意義も大きい。結局このコンビはシングル2枚の4曲のみ、となってしまうのだから。
続く「青空は知らない」はカンツォーネ風の作品でスケールの大きなメロディー。やっぱいい音で聴くといいなあ。ところが鈴木啓之さんのライナーによると、ドラマ「時間ですよ」主題歌の企画モノ「涙から明日へ」(「青空は知らない」と同月発売)の方がヒットしてしまったんだそう……。そりゃ〜、あのケンちゃんにぴったりのこんな素朴な曲、人気ドラマで毎週流れれば売れるだろうけど、シングル2作目でこの意欲作をプロモート出来なかったのは長い目で見てマイナスだったと思うなあ。同じ「時間ですよ」絡み「街の灯り」だってもちろんいい曲だけど、タレントとしてのキャラクターに寄りかかり過ぎて、歌手としての展開にある種制約をもたらした感は否めないでしょう。
マチャアキの魅力は、陽気でドライな声質ながらボーカルにちゃんと泣きがあるところ。スパイダース時代が証明するように洋楽的なメロディーと相性がいい声なのに、日本人好みの叙情性も感じられるから、京平メロディーとの相性が悪い分けない! 「運がよければいいことあるさ」はそんな彼の魅力に溢れた名曲中の名曲。ハニー・コーン「THE DAY I FOUND MYSELF」にも劣らないウキウキ感にちょっぴり切ないテイストがブレンドされた和製ソウル。エンディング間近の♪オッー♪が大好きだ。
「運が……」や「恋人なんかすてちまえ」などのポップなソウルが京平先生の中で彼のスタンダードとなったようで、この路線を開花させたのが待望の初CD化となった『サウンド・ナウ!』。全12曲、筒美京平作編曲。シングル曲を含んでいるので、#5→17→18→13→19→12→20→21→22→4→23→24でプログラムすればオリジナル通りに聴けます。ジャケットもこのブックレット裏表紙でフォローしてあるので、マニアの方もご安心を。
生への悔恨がテーマとなってる異色作「アップダウン」のサビはスプリームス「ラブ・チャイルド」を思わせる。シンガーズスリーとの掛け合いにゾクゾクするカッコよさの「ベィビー、勇気をだして」は、やはりハニー・コーンの「希望に燃えて」が下敷き。この頃京平先生の目がモータウン/ホットワックスに向いていたことが伺える。かと思えば「誰でも愛を求めてる」などはサザンソウル風で、これが名曲・名演! この曲に限らず全編、ラフながらホットなマチャアキのグルーブが光ってます。山上路夫作品や「恋人捜し」はサニーデイ・サービスがカバーしてもなんの違和感もなかっただろうな……。
DISC 2は“筒美京平以降”を収録。見事な編集だけど、一つ提案。シングル両面を収録出来るときはA面とB面を分けて並べる構成じゃなくてもいいような気がする。やはり時代順に聴いていかないとやや混乱します。
次は、佳曲の多い80年代ビクター時代の復刻を是非。大滝作品「空飛ぶくじら」もあるし「二十三夜」のヒットもあるしね。「天皇の料理番」、早くスカパーでやらないかな。
DISC 1<1971〜1973>
01. さらば恋人(作詞:北山修/作曲・編曲:筒美京平)
02. 青空は知らない(作詞:北山修/作曲・編曲:筒美京平)
03. 涙から明日へ(作詞:小谷夏/作曲:山下毅雄/編曲:広瀬雅一)
04. 幸福への招待(作詞:阿久悠/作曲・編曲:筒美京平)
05. 運がよければいいことあるさ(作詞:橋本淳/作曲・編曲:筒美京平)
06. まごころ(作詞:阿久悠/作曲:鈴木邦彦/編曲:高田弘)
07. 恋人時代(作詞:山上路夫/作曲・編曲:筒美京平)
08. 街の灯り(作詞:阿久悠/作曲:浜圭介/編曲:森岡賢一郎)
09. 気らくに生きよう(作詞:北山修/作曲・編曲:筒美京平)
10. 恋人なんかすてちまえ(作詞:北山修/作曲・編曲:筒美京平)
11. 朝の手紙(作詞:小谷夏/作曲:山下毅雄/編曲:広瀬雅一)
12. 誰でも愛を求めてる(作詞:阿久悠/作曲・編曲:筒美京平)
13. 若い旅人(作詞:橋本淳/作曲・編曲:筒美京平)
14. 帰らざる季節(作詞:阿久悠/作曲:鈴木邦彦/編曲:高田弘)
15. 恋の痛手(作詞:山上路夫/作曲・編曲:筒美京平)
16. 地下鉄の駅で(作詞:阿久悠/作曲:山下毅雄/編曲:竜崎孝路)
17. アップ・ダウン(作詞:千家和也/作曲・編曲:筒美京平)
18. 愛情(作詞:阿久悠/作曲・編曲:筒美京平)
19. アパート借りたよ(作詞:山上路夫/作曲・編曲:筒美京平)
20. 僕の可愛い人(作詞:阿久悠/作曲・編曲:筒美京平)
21. ベィビー、勇気をだして(作詞:ちあき哲也/作曲・編曲:筒美京平)
22. 恋人捜し(作詞:千家和也/作曲・編曲:筒美京平)
23. 田舎の教会で(作詞:山上路夫/作曲・編曲:筒美京平)
24. ともだちの朝(作詞:ちあき哲也/作曲・編曲:筒美京平)
DISC 2<1973〜1978>
01. たそがれに別れを(作詞:小谷夏/作曲:中村泰士/編曲:高田弘)
02. 早春の便り(作詞:阿久悠/作曲:平尾昌晃/編曲:竜崎孝路)
03. あじさいの詩(作詞:阿久悠/作曲:浜圭介/編曲:竜崎孝路)
04. 枯葉の宿(作詞:阿久悠/作曲:井上忠夫/編曲:森岡賢一郎)
05. 明日の前に(作詞・作曲:吉田拓郎/編曲:瀬尾一三)
06. 行きずりの男(作詞・作曲・編曲:泉谷しげる)
07. 苺の季節(作詞:喜多条忠/作曲:浜圭介/編曲:若草恵)
08. あのころ君は(作詞:藤公之介/作曲・編曲:川口真)
09. 小さな声で(作詞・作曲:杉本真人/編曲:若草恵)
10. 裏がえし(作詞:竜真知子/作曲:大野克夫/編曲:船山基紀)
11. 今では遅すぎる(作詞:伊藤アキラ/作曲・編曲:ミッキー吉野)
12. 涙が通り過ぎる(作詞:小谷夏/作曲:中村泰士/編曲:高田弘)
13. 永遠にさよなら(作詞:阿久悠/作曲:平尾昌晃/編曲:竜崎孝路)
14. 夜ふけの街(作詞:阿久悠/作曲:浜圭介/編曲:竜崎孝路)
15. 自由なふたり(作詞:阿久悠/作曲:井上忠夫/編曲:森岡賢一郎)
16. 祭りのあと(作詞:岡本おさみ/作曲:吉田拓郎/編曲:瀬尾一三)
17. さよならをするために(作詞:石坂浩二/作曲:坂田晃一/編曲:高田弘)
18. 風光る街で(作詞:喜多条忠/作曲:浜圭介/編曲:若草恵)
19. 坂のある街(作詞:藤公之介/作曲・編曲:川口真)
20. 笑えないよ(作詞・作曲:杉本真人/編曲:若草恵)
21. おやすみ東京(作詞:竜真知子/作曲:佐瀬寿一/編曲:萩田光雄)
22. この道の果てまでも
(作詞:伊藤アキラ/作曲:タケカワユキヒデ/編曲:ミッキー吉野)