「サ」で始まるソニー所属アイドルという括りによる画期的な(?)企画です。なるほど、これなら非情なソニー様に切り捨てられ短命に終わったアイドル達を救済出来るものね。ソニーの場合、5枚目・3年目がないのは当たり前だったからな。でも当人達は、やっと自分名義のCDが出たと思ったら他人と一緒のだったなんて、複雑な気分だろうな……。なんて、出ないよりいいか! なにしろ2回とない企画だろうし、限定盤らしいのでお早目にどうぞ。
沢田富美子は、83年に次ぐ女性アイドル不作の81年デビュー。と思ったら、アニメ主題歌という“マエ”があったなんて。冷戦構造下、日本もアメリカに追従し不参加となったモスクワ五輪のキャラクターソングでデビュー(79年)なんて、いかにも幸先悪い感じ。宇崎夫妻の作品、ちっともロシアっぽくないのが不満。B面の短調のワルツは、かろうじてオホーツクくらいの風情はあります。
さて、正式デビューとなる「ちょっと春風」ですが、これは三浦=小田=大村トリオによる爽やかな名曲。前サビの曲構造とTOTO/エアプレイサウンドは「青い珊瑚礁」と同じで、完全な聖子マナー。彼女の他に若松宗雄Pが手掛けた聖子フォロワーには高橋美枝、松本典子などがいます。切れのよいブラスとハイトーンの美声が印象的。ファルセットと地声の境い目を感じさせず、聖子からR&R魂を抜き去ったようなボーカルとでもいうのかな。2nd「風のシルエット」は、同年の「夏の扉」のサウンドと極似。間奏で、ハードなビートを持続しながらも「乙女の祈り」を挿入するお遊びが面白い。B面「銀色の雨」は、今度は「白いパラソル」みたいなリズムだな……。大村雅朗のアレンジが光る可愛い小品。3rd「愛の泉」では、70年代懐古サウンドへと後退。改名しての再々デビュー(86年)は、ワム!のカバーのカバーだけど、パッとしませんでした。
佐東由梨は、初の同学年アイドルなので個人的に思い入れがある。82年暮れデビューで、中3だった自分としては、受験どうしたんだろ?なんて気になったもんです。彼女は、田辺エージェンシー所属、北海道出身、白川隆三P、松本=筒美作品、短髪、と中原理恵とダブるところが多い。
デビュー曲「どうして?!/やさしくしてね」は、松本隆としても珍しい中学生ソング。両面ともデジタルのビートが効いた曲調で、シンセの音色が派手にアピールしている。そして、ようやくCD化された超名曲の2nd「ロンリー・ガール」。もう毎日聴いてます。ベースとなっているリズムや、ハンドクラップ、ギターのカッティング等、同時期のヒット曲「セクシャル・ヒーリング」からの引用だと分かるけど、単なるパクリに終始せず、立派にコンテンポラリーな歌謡曲となって作用している。フェイドインしてくるスリリングな弦の音色、クセになるブラスのオブリガート、せつないメロディー、どれも良い。佐東由梨のど下手な歌だって臨場感があってなぜか良い。マッチの少女版という感じの歌詞は、小坂忠「しらけちまうぜ」(松本作品)と対になっている。曲調が似ているのも偶然ではないのでしょう。B面「いかないで」も、デビュー作両面を掛け合わせたような実験作で聴きもの。3rd「ハート・ウォッシャー」は、「少女A」を横目に見た歌謡ロックでまずまずの出来だが、B面「天の川」が出色。八神純子「ポーラスター」を思わせる大村雅朗のスペイシーなアレンジと幻想的な旋律が美しい。この頃になると、せっかく歌がキリッとしてきたのに残念。
沢田玉恵は86年デビュー。マイクのノリがいい声で、歌も表情があって相当上手い。映画出演や、資生堂との強力タイアップもあって鳴り物入りでのデビューだったけど、その本格的な気合いが、おニャン子全盛の当時は空回りしてしまった感がある。シングル2枚だけ残し、本人の意思であっさり引退。
結果的に全曲4曲とも松本=筒美作品。どれもマイナーアップテンポという80'sアイドルポップスの非主流。山口百恵を意識した雰囲気も時代錯誤的だが、百恵へ楽曲提供していない京平先生の実験の場と考えれば面白い。不自然な譜割りや唐突なフレーズをふんだんに盛り込んだ作為的なメロディーがその特徴といえる。また「花の精」における、ラテンのビートをデジタルで描ききった武部聡志の凄絶なアレンジは必聴。ついでに言えば「醒めた夢」は百恵というより、中森明菜(「十戒」)へのアプローチと捉えるべきか。
“アイドルは「M」(まこ、まなみ、まさみ、まり)”という企画盤も同時発売。

沢田富美子
01. ノルマーリナ・ミーシャ(好きだわミーシャ)/沢田冨美子
(作詞:阿木燿子/作曲:宇崎竜童/編曲:船山基紀)
02. ナターシャの子守唄/沢田冨美子
(作詞:阿木燿子/作曲:宇崎竜童/編曲:船山基紀)
03. ちょっと春風(作詞:三浦徳子/作曲:小田裕一郎/編曲:大村雅朗)
04. 五月の色(作詞:三浦徳子/作曲:小田裕一郎/編曲:戸塚修)
05. 風のシルエット(作詞:竜真知子/作曲:小田裕一郎/編曲:大村雅朗)
06. 銀色の雨(作詞:竜真知子/作曲:西村勝行/編曲:大村雅朗)
07. 愛の泉(作詞・作曲:渡辺隆己/編曲:竜崎孝路)
08. 哀愁のメキシコ/桜井真里亜
(作詞・作曲:DON WAS,DAVID WAS/日本語詞:なかにし礼/編曲:川口真)
09. 恋をしているの/桜井真里亜(作詞:なかにし礼/作曲・編曲:川口真)
佐東由梨
10. どうして?!(作詞:松本隆/作曲:筒美京平/編曲:大村雅朗)
11. やさしくしてね(作詞:松本隆/作曲:筒美京平/編曲:大村雅朗)
12. ロンリー・ガール(作詞:松本隆/作曲:筒美京平/編曲:大村雅朗)
13. いかないで(作詞:松本隆/作曲:筒美京平/編曲:大村雅朗)
14. ハート・ウォッシャー(作詞:下田逸郎/作曲・編曲:甲斐正人)
15. 天の川(作詞:下田逸郎/作曲・編曲:大村雅朗)
16. 春めき少女(作詞:橋本淳/作曲:林哲司/編曲:後藤次利)
17. 哀愁BOY(作詞:橋本淳/作曲:林哲司/編曲:後藤次利)
沢田玉恵
18. 花の精〜わたしのON-AIR〜
(作詞:松本隆/作曲:筒美京平/編曲:武部聡志)
19. 水蜜桃(作詞:松本隆/作曲:筒美京平/編曲:武部聡志)
20. 紫外線(作詞:松本隆/作曲:筒美京平/編曲:船山基紀)
21. 醒めた夢(作詞:松本隆/作曲:筒美京平/編曲:船山基紀)